86-エイティシックス- 紹介記事
さて、初回は何を書こうか迷いましたがまずは手元にあって目に付いたライトノベル「86−エイティシックス−」について紹介したいと思います。
──エイティシックス
それは人でありながら帝国に劣等と定められ人権を奪われた人種。
彼らはシンギュラリティによって暴走した無人の殺戮兵器との戦争の最前線に送られ次々とその命を散らしていく。
その戦場での死者はどれだけ出てもカウントされず死傷者「0」と見做される。
何故なら彼らは人ではなく「豚」なのだから……
大まかな概要が以上です。
この作品は安里アサトさんの色が目に浮かぶような繊細な筆致としらびさん(りゅうおうのおしごとの絵師さんですね)の可愛いイラストが目を引きます。
なかなか衝撃的なあらすじでしょう?
実際の大戦の記録をモデルにして創られたお話らしく戦死や差別の表現が生々しいです。
物語の舞台は架空の国サンマグノリア共和国で敵国が開発した無人兵器に攻め込まれ窮した共和国は有色種と言われる人種の人権を奪い86(エイティシックス)と呼び殺戮兵器との戦場へと送り込みます。
なぜ反乱が起きなかったのか?
それは「お前たちがおとなしく従えば子どもたちの命と生活は保証してやる」と言って渋々従わせたのです。
大人たちが戦死すればその子どもたちには「お前たちがおとなしく従えば弟たちの命を……」
吐き気を催す嘘を重ねて次々とエイティシックスたちを絶望の戦場へと送り込んだのでした。
その裏で共和国の中央では特権階級である貴族たちが優雅な生活を満喫しています。
物語の主人公は特権階級である貴族の娘レーナ。
彼女はエイティシックスたちを戦場に追いやり貴族たちだけが豪奢な生活を謳歌していることに疑問を感じている軍人でした。
貴族である彼らの多くはこの世界の通信機能「同調(アクティベート)」(この作品特有の技術で戦場に居なくても通信などのコミュニケーションを取れる機能です)を使って戦場に行かずしてエイティシックスたちを管理しながら自堕落な生活を送っていました。
そんな腐った貴族たちにレーナは常日頃から憤りを覚えていました。
そんな彼女が新しく指揮を任されたのは「スピアヘッド戦隊」と呼ばれる過酷な戦場を生き残った少年少女ばかりの精鋭中の精鋭部隊でした。
彼女は最前線で戦い続ける彼らに申し訳ない気持ちを抱きながら少しでも距離を縮めようと懸命に語りかけます。
しかし彼らはそんなレーナに応じながらもどこかよそよそしく一向に心を開こうとしません。
やがて彼女はある出来事がきっかけで彼女自身も気づいていなかった「自身の残酷さ」に気づいてしまうのでした……
ヒロインであり主人公であるレーナが可愛いんですよ、これが。かっこよくもある。
レーナの可愛さと健気さは本作最大の見どころの一つです。
もう1人の主人公「アンダーテイカー」はスピアヘッド戦隊のリーダーです。本名シン。
エイティシックスたちは低性能機である「ジャガーノート」に乗って「レギオン」と呼ばれる無人機、シンギュラリティの怪物たちと戦います。
オーバーテクノロジーの化け物であるレギオンはジャガーノートより遥かに高性能の兵器であり更に自ら数を増やすこともできます。
そして開発した帝国すらも滅ぼした恐ろしい怪物兵器でもあります。
ジャガーノートに乗って戦うシンたちがかっこいいんですよ。
もっといい兵器回してやれよ、とも思うんですがこの小説はそんな御都合展開はありません。
如何にしてスピアヘッド戦隊が怪物たちに立ち向かうかも本作最大の見どころの一つです。
ここまでの私の書き方ですと殺伐としたお話のように思えますがスピアヘッド戦隊同士の軽妙な会話や何気ない日常の一コマという「冷却剤」もこの作品に一味スパイスを加えています。
とはいえ、基本の世界観は人種差別や戦争、シンギュラリティといった人間の醜さをテーマとしたものでそういったものと人はどうやって戦っていくか?というテーマも根底には流れています。
私は読んでて何回か泣きました。
最後の1ページまで目頭が熱くなりました。
貴族側へのちょっとしたざまぁもあります。
気になった方はぜひぜひ、お読みください。